2017.05.11『私のままじゃいけないの?』スウェーデン留学を経て、インクルーシブ教育のあり方を考える

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こんにちは!TRUNKライターのアイリです。
今回は、スウェーデンに現地の教育について学んできた学生に、インタビューしてきました。
  • 教育関連について関心がある。

  • スウェーデンの教育について興味がある。

  • インクルーシブ教育が知りたい!

  • という方に、オススメの記事です。



    目次



    Q.1 なぜスウェーデンに行こうと思ったのか?
    Q.2 留学中の活動を教えてください
    Q.3 小学校ではどのようなことを学びましたか?
    →人を1人の人として扱う大切さ
    →スウェーデンの教育方針について
    →ADHDを抱える児童への手厚いサポート
    →インクルーシブ教育とは
    Q.4 日本の教育と比べて思うことは?


    Q.1 なぜスウェーデンに行こうと思ったのか?


    ー主には人生経験として行ったのがメインでした。学校の交換留学生制度を利用して行くことができ、なおかつスウェーデンという国に興味があったからです。一例ではありますが、スウェーデンでは男女平等の価値観がとても浸透しています。昼間からベビーカーを押して街中を歩く男性が見られるのも、スウェーデンでは当たり前のような光景。日本ではあまり見られない姿ですよね。

    日本にいると、日本のスタンダードが自分のスタンダードになってしまうことがあります。しかし、「本当にそれが正解なのか?」という疑問をずっと抱いていました。
    福祉大国であるスウェーデンの社会性。また、どのような人がどんなマインドを持って生活しているのか?などを体感したくて、留学を決心しました。



    Q.2 留学中の活動を教えてください


    ー留学中はスウェーデンの学校に通っていました。授業は12時半に登校して、そこから3時間連続の授業というスタイル。20分間のティータイムが休憩時間として設けられていました。

    授業内容で特に印象的だったのが、人種・職業・性別によって社会保障がどのように変化するのか?というフィールドワークです。それぞれの項目がランダムに割り振られて、自分がその立場の人になり社会保障について議論しました。西ヨーロッパ諸国の留学生達は、割り振られた役の考えをきちんと主張していました。話を聞いていると、常日頃から自分の人権は自分で守るという意識があるようです。ここで自分がいかに自分の人権や自国の政治、また生き方に対して考えていないかを痛感しました。

    また、1ヶ月間の小学校への観察実習も行いました。基本的にスウェーデン語で授業を行っていたので、最初は分からないことばかりでした。しかし、私とのコミュニケーションは英語で行っていたので、児童の英語力が1ヶ月間で飛躍的に伸びるという現象が起こりました。これは予想外の相乗効果でしたね。
    実は、この留学には「教師になるぞ!」というような、何か確信的な夢を持って行った訳ではありませんでした。
    しかし、この小学校実習で、この子ども達が将来を担う存在になるのだなと実感し、色々なことを教えてあげたいという想いが湧いてきました。この時に教員になりたいという夢が確信的なものになりました。

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    留学したスウェーデン、ウメオの寮から見える夜明けの風景。この時の時刻は午前7時。ウメオの夜明けは少し遅いのです。


    Q.3 小学校ではどのようなことを学びましたか?



    ー語りつくせないくらい様々なことを学んだのですが、大きく分けて2つのことを学びました。


    人を1人の人として扱う大切さ



    ー小学校の中で印象的だったこととして、人を何かの枠で捉えずに1人の人としてきちんと対応している子ども達と対面した時でした。
    私が関わらせてもらったクラスの中に、1人アラブ系の児童がいました。しかし、児童達はその子をいじめたり可哀想な目で見る訳でもなく、1人として対等に付き合うことができていました。私自身も日本人なので「切腹するんでしょ〜?」なんて、聞かれるんじゃないかと思っていましたが、全くそういうこともなかったです。私と関わる時も、日本人というカテゴリーではなく、1人の人間として見てくれたことが嬉しかったです。

    そして何よりも驚いたのが、小学生がそのような人と関わり方が出来るという点です。生まれてまだ10数年の子ども達が、そのような考えで人と接することが出来るということ。スウェーデンでは個人を尊重する教育が進んでいることは認識していたのですが、実際に目の当たりにして驚いたのを覚えています。


    スウェーデンの教育方針について



    福祉大国として知られるスウェーデンでの教育制度は、個人を尊重する教育形態がとても整っていることで有名です。スウェーデンの小学生達の人との関わり方の基盤は、きっとここにあるのでしょう。2012年の世界男女格差報告によると、スウェーデンは世界で最も平等が進んでいる国の1つと言われています。スウェーデンでは小学校に行く前に通う、就学前学校というものが存在します。日本でいう保育園や幼稚園のようなものです。
    そこでの教育価値観は、「人は皆、同等の価値があり、平等であること。そして、お互いに連帯感を持つことが大切であること。これらの価値観は、授業にも学校の組織の中にも浸透していなければならない。」という、民主主義の哲学が基盤となっています。

    また、スウェーデンでは社会の一員として、自分の言動に責任が取れる国民を育てるという学校目標が浸透しています。
    そのため教師は、子ども達が自分で考え正しい言動の選択ができるように育てることを目標として、教壇に立っているのです。

    まぁ、このような教育方針は、日本や他の国にも必ずあるとは思います。しかし、スウェーデンのなにが凄いかというと、この男女平等や個性の尊重への徹底ぶりが凄いのです。

    例えば、街中にあるおもちゃ屋さんのポスターには、拳銃のおもちゃを持って遊ぶ女の子と、おままごとセットで遊ぶ男の子の写真が使われています。女の子だからとか、男の子だからというよな概念はあまりありません。また、スウェーデンには徴兵制があるのですが、男性だけでなく女性も召集されるという徹底ぶりです。



    ADHDを抱える児童への手厚いサポート



    スウェーデンの小学校では、ADHDを抱える生徒への手厚いサポートが日本と違っていて印象的でした。
    ADHDとは注意欠陥・多動性障害のことで、簡単にいうと不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。英語では Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。【参考ページ】ADHDなどの発達障害は、近年日本でも認知度が上がりつつあります。

    実習を行ったスウェーデンの小学校では、ADHDの生徒に1人専属でサポーターがついていました。また、落ち着きがなくなってしまった時のために、その子専用の別室が用意されているのも日本との違いでした。その子がもし、授業中に外に行きたくなってしまったら専属のサポーターの人と外でサッカーを行い、気が済んだら教室に帰ってきて勉強をしていましたね。同じ学校の教室内で、その子が出来る範囲でのインクルーシブ教育を行っていたことが日本との大きな違いでした。


    インクルーシブ教育とは



    先ほどの話の中で出てきたインクルーシブ教育とは、

    子どもたち一人ひとりが多様であることを前提に、障害の有無にかかわりなく、誰もが望めば自分に合った配慮を受けながら、地域の通常学級で学べることを目指す教育理念と実践プロセス
    引用:発育ナビ

    つまり、子供達の多様性を尊重して一人ひとりを大切にしながらも、皆で学習していこう!という教育理念です。

    間違えないで欲しいポイントとしては、『ハンディキャップを持つ子供だけでなく、ハンディキャップを持たない子供も含めた、全ての子供達のための教育』ということ。
    誰もが違うことを前提とした教育を考えていくことが大切です。


    もっと簡単にいうと、
    “みんな違ってみんないい”という、よく学級目標で使われがちな目標を本気でやる教育というイメージです。
    簡単そうに見えて、この教育は大人側が意識しないといけません。教員が徹底して言動の選択を行うこと。また、保護者や周囲の大人もこのことを意識して生活していないと、なかなか子ども達の中にこの概念は生まれないのではないでしょうか。

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    ウメオ市に流れる大きな川。冬は氷点下20℃になるので水面が凍っています。



    Q.4 日本の教育と比べて思うことは?



    ー移民の児童やADHDの児童に対するサポート姿勢からも、スウェーデンでは個を尊重しようという考え方が現場にも浸透しているように感じました。これは社会的な風潮もそうですが、教育現場の一貫した姿勢が手助けしているのではないかなと思います。

    特に感じたのは、社会的少数派であるマイノリティーを排除しない教育が行われていたということ。
    移民の子ども達にはスウェーデン語の教育機会を提供し、身体的にハンディキャップがある児童には学校がサポーターをつけていました。日本ではそのような少数派を排他的に扱ってしまうことが多いのではないかな?と、留学後から特に感じています。

    アルビノ(先天的にメラニン色素が薄い個体)の友人は元々髪が白いのですが、日本でアルバイトを探すときに地毛のまま面接を受けると不合格になってしまうことが多くとても困っている様子でした。元々の髪色なのに、逆になんで変えないといけないのだろうと不思議ですよね。

    私自身、小学校時代はとても活発だったので、男の子とドッジボールなどをして一緒に遊ぶことが多かったのですが、その時に『なんで女子のくせに強いんだよ!』というようなことを言われました。幼いながらにも“なんで女の子は、強かったらいけないんだろう?”と疑問に思ったのを覚えています。スポーツが得意なのが私なのに、私のままじゃいけないのだろうかと考えたこともありました。

    そもそも全てのカテゴリーにおいて、少数派に所属しない人なんていないということを、私は主張したいです。



    編集後記



    今回、スウェーデンでの留学を経た学生さんからスウェーデンでの教育について話しをお聞きしました。やはり、現地で体感した人からの言葉はどこかドキリとさせられることが多く、とても刺激的な時間でした。
    日本の教育環境の良さや、先生方の日々の賢明な取り組みは実習などで垣間見ています。現状として、とても忙しい労働環境に置かれる先生方が、このようなマイノリティーの部類に所属してしまう子ども達に対して、細やかな配慮はしにくいのではないかな?と感じます。少数派の声が届くような社会になるよう、若者がもっと選挙や政治などに積極的になり、自分たちが住みやすい地域、国とはどのようなものなのか?を考えなければいけないなと感じました。

    この記事を書いた人

    津吹 アイリ

    東京学芸大学3年のTrunk専属ライター。陸上部だけど足は遅い。膝が凄くゆるい。