2015.08.30Google-Alphabetに学ぶブランディング

Alphabetにみるブランド戦略


ブランドとは、目に見えない価値です。社名、商品名、ロゴ、デザイン、品質、歴史、店舗、キャンペーンなど、 いろんな要素をうまく調和させて、価値を高めることをブランディングといいます。

何かひとつでもおかしな要素が混ざってしまうとブランドが安っぽくなったり、ゴージャスになりすぎたりして、ユーザーに正しく伝わりにくくなってしまいます。けっこう繊細なのです。

そんな、一筋縄ではいかない「ブランディング」に大きな風穴を開けたのが、最近Googleが発表した"Alphabet"という構想です。

今回は、このブランド戦略の画期的ポイントと、従来の問題の解決方法についてご説明したいと思います。

branding

社名=製品名は正攻法? ブランドの管理方法について考える


ブランディングには、これまで解決されない問いがありました。それが、「社名と製品名をどのように結び、管理するのが良いのか」というシンプルな問題です。

日本コカ・コーラ社を例に挙げてみます。この会社は「コカ・コーラ」という社名なのにお茶、ミネラルウォーター、スポーツドリンクなどを販売しています。「コカコーラのお茶」って冷静に聞くとちょっと不思議ですよね。

もう一つ例を挙げてみます。「お正月を写そう」でおなじみ富士フイルム。こちらの企業はそもそもカメラフィルムの売上は1%以下です。皆さんご存知でしたか?この会社は既にTVCMなどでご存知かもしれませんが、フィルムのノウハウを活かしてヘルスケア分野で活躍しているのです。

これが社名と製品名の問題です。日本コカ・コーラも富士フィルムもきちんとブランディングされているので誰も疑問を持ったりしませんが、それでもやはり、もっと良い解決策はないのだろうかというのがブランド担当者にとって長年の問題だったのです。

なぜこのような問題が起こるのかというと、社名と製品名が同じ場合、どちらのブランドパワーも捨てることができないからです。社名と製品名が同じだと、シンプルで認知度が上がりやすいし、会社の方向性もぶれにくいというメリットがあり、製品名が社名になるようなケースが多いのです。

最近だと、NAVER傘下にあったアプリの『LINE」がそのまま法人化したケースがあげられます。
ただし、多角化していくときに、先述の日本コカ・コーラのように「うちの社名はコーラだけどお茶を売ってもいいだろうか?」という壁にぶつかりかねないデメリットもあります。

そこで、複数ブランドを統合する方法として理論化されたのがマルチブランド戦略です。

マルチブランド戦略


マルチブランドの例として代表的な企業は、P&Gがあげられます。『パンパース』や『アリエール』、『レノア』、『ボールド』、『ファブリーズ』、『ヴィダルサスーン』など。あげたらキリがないないほどのブランドを抱える世界的消費財カンパニーです。製品それぞれがブランド力を持ちつつ、きちんとP&Gという社名がそれを支えています。

P&G以外にも、ネスレやロレアルなど消費財カンパニーでは多くみられる戦略です。
ただ、これにもデメリットがないわけではありません。それは、社内のブランド同士でカニバリズム(自社の製品やブランド同士が市場を食い合う状況)が起こり、ブランドの価値分散が起こってしまいます。

例えば、レノアが消臭剤を作ってファブリーズを倒してしまったり、逆にファブリーズが柔軟剤を作ってしまったり。あるいは、お互いに遠慮して面白い製品が作れなくなるなんて言う可能性もあります。いずれも会社としてはマイナスです。

それでも、ブランディングにおいては、親ブランドに子ブランドをぶら下げるというマルチブランド戦略こそがベストプラクティスとされてきたのです。

既存のブランド戦略をひっくり返したGoogle


IT業界も例に漏れず、Apple社では、iWatchかと思いきや『Apple Watch』が発売されたり、Microsoft社が『Skype』を買収して、自社内サービスであった『Lync』を倒すというブランド混沌期にあります。もちろんGoogleも、携帯はAndroidなのにPCはChrome、という統率感のない状態にありました。

それを一気に解決したのが、今回発表された"Alphabet"なのです。

既存ブランドの上位概念を後から作ってしまうという、まさにコペルニクス的発想の転換。しかも「AからZまで」というストーリーを持たせることで、今までの「点」を線で結ぶことに成功しました。
今回の新構想によって、Googleは改めて検索エンジン事業に集中できます。これは、ChromeやAndroidも同様です。さらに、謎の親会社Alphabetの登場によってミステリアスな印象を与え、これまで以上に魅力が増したように感じないでしょうか。

親ブランドを後出しするなんて、マルチブランドカンパニーには真似出来ません。
いずれにしても、Alphabet的なブランド整理の手法は非常に画期的です。マーケティングやブランディングに興味のある方は、今後、Alphabetがどのようにブランド価値が変化していくのかウォッチしていくと面白いと思います。

この記事を書いた人

室屋 武尊

リクルート、マイクロソフト、外資系投資銀行を経て、現在は外資系スタートアップ企業に勤務。趣味はデジタルマーケティング。